造作収納は「置くもの先決め」が正解——部屋の広さはその後でいい
注文住宅で造作収納を計画するとき、「まず部屋の広さを決めてから収納を考える」という順序で進めている方が多いように思います。ところがその順序が、あとになって「なんか収納が使いにくい」「思ったより物が入らなかった」という後悔を生む一因になっています。
私が現場でお客さまの間取りを一緒に考えるとき、造作収納については必ず「逆算の順序」で進めてもらいます。部屋の広さを先に決めるのではなく、収納するモノを先に洗い出して、そこから寸法を割り出し、最後に部屋の大きさを合わせる。この記事ではその考え方を順を追って説明します。
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- 収納するモノを先に決めることが、造作収納設計の正しいスタート地点
- モノの量・サイズ・使い方を洗い出せば、奥行き・高さ・幅が自然に決まる
- 家具の寸法が固まってから、部屋の広さをそこに合わせて調整するのが正しい順序
- 「なんとなく広い部屋」を先に取ると、収納が収まらない・余白が死ぬリスクが生じる
- 造作はオーダーメイドだからこそ、モノ先行の逆算設計が最大限に活きる
Contents
1. 部屋の広さを先に決めると収納が中途半端になる理由

間取りを考えるとき、多くの方はリビングを何畳にしよう、寝室は何畳にしよう、という「広さ」の話から入ります。これは感覚的にわかりやすいので自然な流れではあります。しかしその後に「残りのスペースで収納を取ろう」となると、必ず「余りもの」の発想になります。
部屋の大きさが先に決まっていると、収納に割ける寸法は結果として「残った分」になります。壁の一面に造作棚を付けようとしても、壁の長さがすでに確定しているため、奥行きをどう取るか、高さをどこまで上げるかは後付けの調整になる。その結果、「なんとなく棚を付けた」収納が出来上がり、実際に使い始めると物が入り切らなかったり、使いにくい高さになっていたりします。
「収納は多めに取ろう」という言葉をよく聞きますが、「多め」というあいまいな基準で設計すると、広いだけで使いにくい収納になることがあります。広さと使いやすさは別の話です。問題は収納の量ではなく、モノと収納の寸法が合っているかどうかです。
2. 造作家具はオーダーメイドだからこそ「モノ先行」が前提になる

既製品の家具を買う場合は、サイズが規格で決まっているので、部屋に合わせて家具を選ぶしかありません。しかし造作家具はそもそもオーダーメイドです。ミリ単位で寸法を決められる。これが既製品との最大の違いであり、最大の強みです。
ところが、その強みを活かすためには前提が変わります。造作家具は「何を収納するか」から設計を始めないと、その自由度が意味をなさないのです。
たとえばウォークインクローゼットを造作する場合、ハンガーパイプの高さはかける衣類の丈によって変わります。コートをかけるのか、ジャケット類だけなのかで必要な高さが違う。上下二段に分けるのか一段通しにするのかも、収納するモノの種類で決まります。棚の奥行きも同様で、畳んだ衣類を置くのか、バッグを並べるのか、引き出しケースを入れるのかで最適な数字が変わってきます。
これをあらかじめ洗い出さずに「なんとなく使いやすそうな収納」を作ると、完成した瞬間から妥協の連続になります。造作の自由度を活かすには、モノを先に決めることが絶対の前提になります。
3. まず収納するモノの量・サイズ・使い方を洗い出す

では具体的に何を洗い出せばいいのか。私が現場でお客さまに確認するのは大きく三つです。
3-1. 何をどれだけ持っているか(量)
現在持っているモノを場所ごとに棚卸しします。衣類なら今あるすべての衣類の量を把握する。季節ものの布団や来客用の布団がどれくらいあるか。キッチン周りなら調理家電・食器・乾物・缶詰・酒類などを種類別にリストアップする。「だいたいこれくらい」という感覚ではなく、実際に数えることが大事です。
引っ越し前に今の家で実際にモノを数えてみると、思っていたより多かったり少なかったりすることがほとんどです。感覚に頼らず現物確認することが、造作収納の精度を上げます。
3-2. モノのサイズ(寸法)
量がわかったら次はサイズです。よく使う食器のサイズ、よくかける衣類の丈、ストックしているペットボトルの高さ、掃除機の収納時の高さ……。こうした実寸を把握しておくと、棚の高さや奥行きを「実際に使える寸法」に設定できます。
たとえば掃除機をしまう収納であれば、ヘッドを外した状態の高さなのか、スタンドに立てたままの高さなのかで必要な内寸が変わります。「入れば十分」ではなく「使いやすい高さかどうか」まで考えると、日々のストレスが格段に減ります。
3-3. 使い方・取り出し頻度(動作)
三つ目は使い方です。毎日取り出すモノか、季節に一度しか出さないモノかで、収納の位置と高さが変わります。よく使うモノは目線からひざ上くらいの「ゴールデンゾーン」に置けるよう、棚の構成を考える。使用頻度の低いモノは上段や下段に振り分ける。この動作ベースの発想が、使いやすい造作収納の鍵になります。
4. モノから逆算すれば奥行き・高さ・幅が自然に決まる

モノの量・サイズ・使い方が整理できると、造作家具の三つの寸法——奥行き・高さ・幅——が自然に割り出せます。
奥行きについては、収納するモノの奥行きに合わせるのが基本です。一般的には、衣類棚は45〜50cm程度、本棚は25〜30cm程度、食品ストックのパントリーは30〜45cm程度が目安とされていますが、それは「一般的には」の話です。実際に収納したいモノのサイズを測った上で、その数字に合わせるのが造作のあるべき姿です。
高さは天井いっぱいまで使えるのが造作の大きなメリットですが、上段に何を置くかを決めていないと、高すぎて使えない棚になります。脚立を使って出し入れする頻度はどれくらい許容できるか、それも含めて判断します。
幅は、収納量と動線の両方で決まります。ウォークインなら通路幅を確保した上でどれだけのハンガーパイプ・棚を取れるか。壁面収納なら設置できる壁の長さと構造の制約の中で最大限に活かす。ここまで来て初めて「この収納を収める部屋はどれくらいの大きさが必要か」という問いに答えられます。
5. 家具寸法が固まってから部屋の広さを合わせる正しい順序

造作収納の寸法が決まれば、それを置く部屋の広さは「逆算で決める」ことができます。
たとえばウォークインクローゼット。収納するモノを整理した結果、両側にハンガーパイプと棚を配置して通路幅を確保すると、内寸で横180cm・縦200cmが必要だとわかったとします。そうなれば、その寸法を満たすスペースを間取りに確保すればいい。最初から「ウォークインクローゼットは3畳」と決めてしまうと、実際の生活に合った収納量にならないことがあります。
部屋の広さはモノと家具の寸法が確定した後に決める。この順序を守ることで、無駄なスペースを削り、本当に必要なところに面積を使える間取りになります。
リビングや寝室も同様です。リビングに置く家具(ソファ・テレビボード・ダイニングテーブルなど)の寸法と動線を先に考え、その合計から必要な床面積を割り出す。「なんとなく広い方がいい」という発想で面積を取っても、家具と空間の関係が整理されていなければ、広いだけで使いにくい部屋になります。
6. 「なんとなく広い部屋」を先取りすると起こる失敗パターン

部屋の広さを先行させると、実際にはいくつかのパターンで困ることがあります。
一つは、造作家具を入れた後に「余白が死ぬ」パターンです。部屋を広く取ったはいいが、造作収納と動線を配置すると残ったスペースが中途半端な広さになり、何にも使えない「空白」ができてしまう。「なんか部屋がスッキリしない」という感覚の正体は、多くの場合この空白の問題です。
もう一つは、造作家具が収まらないパターンです。「この壁に収納棚を作りたい」と計画していたのに、構造上の柱位置や開口部の関係で棚の幅が取れなかった、という事態。部屋の広さを先に決めてしまうと、壁面の有効長が先に確定してしまうため、後から収納の計画を調整しにくくなります。
三つ目は、コストのムダです。使わない広さのために床面積を増やすと、建築コストも上がります。必要な収納寸法から逆算して部屋の広さを決めることは、コストの最適化にも直結します。
7. 造作収納を成功させるための逆算設計チェックリスト

最後に、実際の設計打ち合わせで使えるチェックの視点をまとめます。
モノを洗い出す段階で確認すること
- 場所ごとに収納するモノを種類別にリストアップしているか
- 今持っているモノの実寸(高さ・奥行き・幅)を測っているか
- 毎日使うモノ・週数回使うモノ・季節使いのモノを分類しているか
- 引っ越し後に増えそうなモノ(子どもの成長・趣味の道具など)を想定しているか
家具寸法を決める段階で確認すること
- 奥行きはモノの実寸から決めているか(なんとなくの「標準寸法」になっていないか)
- 棚の高さはゴールデンゾーンを意識して使用頻度で割り振っているか
- ハンガーパイプの高さは実際にかける衣類の丈から決めているか
- 引き出しを使う場合、引き出しを開けたときの動線スペースを確保しているか
部屋の広さを決める段階で確認すること
- 家具の配置と動線を先に決めた上で、部屋の必要面積を算出しているか
- 「なんとなく広め」という余裕取りをしていないか(根拠ある余裕か)
- 造作収納の配置と構造上の制約(柱・窓・扉の開口)が整合しているか
これらを一つひとつ確認しながら進めると、完成後に「なんか使いにくい」と感じる収納にはなりません。逆に言えば、このプロセスを飛ばして感覚で決めると、後悔の原因になりやすいのです。
8. まとめ:収納するモノから逆算して空間全体を整える

造作収納の設計で大事なのは、「部屋の広さ→家具の配置」という順序を逆にすることです。
収納するモノを先に洗い出す。モノの量・サイズ・使い方から奥行き・高さ・幅を割り出す。家具の寸法が確定したら、それに必要な部屋の広さを合わせて決める。この順序で考えると、無駄のない、使いやすい空間が整います。
造作はオーダーメイドであることが最大の強みですが、その強みは「何を収納するか」という前提があって初めて活きます。「なんとなく広い部屋」を先に取っても、収納が中途半端になったり余白が死んだりするリスクがあります。
注文住宅の打ち合わせでは、間取りの話と並行して「どこに何をしまうか」を具体的に詰めることが、後悔のない家づくりにつながります。収納のことを後回しにせず、モノを先に決める——その一点を意識するだけで、造作収納の完成度は大きく変わります。
記事を読んで気になることがあれば、
実際の家づくりもぜひご覧ください。