直下率ってなに??家の間取りを考える時には直下率も考えよう
こんにちは、クオホーム本田です。
今回は少し構造の事に触れたいと思います。
結論から言うと間取りを考える時にはこの直下率もしっかりと頭に入れて設計しましょう。という事になります。
今回はそもそもの「直下率」について解説しておきますので少しでも覚えておきましょう。
直下率ってなに??家の間取りを考える時には直下率も考えよう
直下率とは、柱や耐力壁などが1階と2階で同じ位置にどの程度の割合で揃って配置されているかを示す指標です。
直下率には次の2種類があります。
・柱の直下率:1階と2階で柱の位置が一致する割合
・壁の直下率:1階と2階で耐力壁の位置が一致する割合
ちなみに耐力壁とは、水平方向に作用する力に対して抵抗する役割を持つ、構造上重要な壁をいいます。
直下率と耐震性の関係とは
一般的に、直下率の数値が高いことは建物の耐震性に有利にとなり、安定した家づくりをするうえで考慮するべき要素のひとつといわれています。
というのも、熊本地震では「耐震等級2」で建てられたにもかかわらず倒壊した住宅があることに関係しています。
耐震等級とは、「住宅と品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて、一般の消費者にも性能の比較ができるよう設定されている基準のひとつです。
耐震等級には3段階の区分が設定されています。
・耐震等級1:建築基準法に定められている最低限の耐震基準強度
・耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の耐震強度
・耐震等級3:耐震等級1の1.5倍の耐震強度
熊本地震後に有識者によって調査が行われ、「耐震等級2」で建てられた家が倒壊したのは「直下率の不足」が影響している可能性を指摘した報告がありました。
この「直下率の不足」が建物を倒壊に導く可能性があるという見解を受け、メディアを通じて広まったことが耐震性を図る指標として注目された経緯になります。
直下率と建築基準法の関係とは
建物の耐震性を向上させるうえで直下率を高めることが効果を発揮するという見方がある一方で、建築基準法に直下率の明確な基準は定められてはいません。
また耐震等級を取得するために、一定の直下率を確保する必要もありません。
ただし建築基準法には、上下階の柱が1本でつながっている「通し柱」に関する規定が定められ重要視されています。
「通し柱」に関する規定とは、2階以上の4隅の柱について次のいずれかを満たす必要があるという内容です。
・2階以上の隅柱を通し柱とすること
・2階以上の隅柱を通し柱としない場合は接合部を同等以上の耐力を有するよう補強すること
建築基準法に規定がないことからも、これまで直下率があまり重要視されてなかったことがわかります。
ところが近年では、耐震性の目安として直下率の基準を設定したプランが住宅会社から提供されるなど、プロモーション活動として取り組む傾向も見られます。
家づくりにおいて「直下率の向上」は広く関心を集めており、いまや注目する必要のある指標といえるでしょう。
ただし直下率を高めることで、間取りは制限される可能性もあるため検討には注意が必要です。
直下率の目安
「直下率の不足」が建物の強度に影響を与える可能性があるとの見解がありますが、どの程度の直下率を確保すればよいのでしょうか。
間取りの計画段階で直下率の目安を意識することで、安全性とのバランスに配慮した家づくりを検討できます。
柱と壁の直下率の目安について、個別に見ていきましょう。
柱の直下率の目安とは
適正とされる柱の直下率の目安は50%以上といわれています。
1階と2階の間取りを同じにすれば、柱の直下率は100%にできます。
しかし広いリビングや吹き抜けなど快適性やデザイン性を考慮して計画することも多く、間取りの自由度を追求すると直下率は低下することが一般的です。
建物の重さなど「鉛直方向(縦方向)の力」は、おもに柱を通じて地盤へと伝わります。
柱の直下率が低いと、柱だけでまかなうことができない「鉛直方向の力」を梁や床が負担する必要があります。
柱の直下率が高いと、「鉛直方向の力」を地盤までスムーズに伝えられる点で効率的な構造設計といえるでしょう。
壁の直下率の目安とは
適正とされる壁の直下率の目安も50%以上といわれています。
地震や風など「水平方向(横方向)の力」に抵抗する役割を担っているのが耐力壁です。
地震が発生し建物に「水平方向の力」が作用したときは、おもに耐力壁が負担し地盤へと伝達します。
柱の直下率同様に、壁の直下率が高いと「水平方向の力」の伝達は効率が高まります。
直下率の計算方法
こちらの章では直下率の計算方法について解説いたします。
柱の直下率と壁の直下率の計算方法についてそれぞれ見ていきましょう。
柱の直下率の計算方法について
柱の直下率の計算方法は次の通りです。
・柱の直下率=1階と2階で柱の位置が一致する数÷2階の柱の数
1階と2階で柱の位置が一致する数を2階の柱の数で割った数値が柱の直下率で、数値が大きいほど有利と判断します。
壁の直下率の計算方法について
壁の直下率の計算方法は次の通りです。
・壁の直下率=1階と2階で耐力壁の位置が一致する長さ÷2階の壁の長さ
1階と2階で耐力壁の位置が一致する長さを、2階の耐震壁の長さで割った数値が柱の直下率で、数値が大きいほど有利と判断します。
「直下率が良い家」が「耐震性が良い」わけではない
熊本地震では「耐震等級2」で建てた住宅も倒壊しており、「直下率の不足」が原因のひとつと考えられるといった専門家による見解があります。
しかし一方で直下率が低い建物でも倒壊を免れているケースが多いことも事実です。
建築基準法には直下率に関する規定はなく、また耐震等級を取得するために直下率の基準を設けてはいません。
耐震性の向上は、直下率を高めることも重要なテーマのひとつですが、耐力壁を適正に確保することが基本的な考え方です。
住宅の耐震性を判断するポイントは、直下率以上に「耐力壁の量」のほうが重要視されているのです。
耐力壁の量がポイント
耐力壁とは地震や風など「水平方向の力」に抵抗するための壁で、地震の発生時にはおもに耐力壁が揺れを負担します。
屋根部や床に作用する「水平方向の力」は耐力壁へと伝わり、さらに基礎などを通じて地盤へと流れていきます。
一方で柱は「鉛直方向の力」を負担するため、地震発生時の「水平方向の力」への抵抗力として貢献することはそれほど期待できません。
したがって住宅の耐震性を高めるには、地震の揺れに抵抗する耐力壁の量を増やすことが最も効果を発揮するとされているのです。
必要な耐力壁の量を算出する「壁量計算」
引用元:https://jutaku.homeskun.com/assets/media/contents/yokuwakaru/4bunkatsu.pdf
木造住宅を新築するにあたり必ず行われるのが壁量計算です。
地震に強い家づくりを検討するにあたって、必要な耐力壁の量を計算し建物に反映させる作業が必須となります。
壁量計算は地震や風など「水平方向の力」に対して抵抗可能な「必要壁量」を割り出す方法です。
壁量計算の流れは次の通りです。
- 地震の力に対する必要壁量の計算
- 風の力に対する必要壁量の計算
- 存在壁量の計算
- 壁量充足率の計算
地震の力に対する必要壁量の計算
地震の力に必要な壁量=床面積×係数
係数は、地震の力に必要な壁量を求めるため建物の種類別に設定された数値です。
階ごとに算出します。
風の力に対する必要壁量の計算
風の力に必要な壁量=見付面積×係数
見付面積とは、建物の風を受ける部分の面積のことで、各階の床上1.35mのラインからさらに上の部分にあたります。
係数は、風の力に必要な壁量を求めるために設定された数値です。
階ごと、方向ごとに算出します。
存在壁量の計算
存在壁量=壁の長さ×壁倍率
存在壁量とは、計画にある耐力壁に対し、耐力壁の種類ごとに設定されている壁倍率をかけて算出した壁量のことです。
階ごと、方向ごとに算出します。
壁量充足率の計算
壁量充足率=存在壁量÷必要壁量
壁量充足率とは計画している耐力壁の量が、地震や風など「水平方向の力」に対して抵抗可能な「必要壁量」以上であるかを確認します。
階ごと、方向ごとに壁量充足率を算出し、すべての数値が1.0以上になれば条件に適合すると判断できます。
耐力壁のバランスを見る「4分割法」
耐力壁は、量と同時に考えなければいけないのはバランスです。
耐力壁の量を適切に確保することで地震に強い住宅になりますが、バランスよく配置されていなければ本当に安全とはいえません。
耐力壁がバランスよく配置されているか、チェックする方法が4分割法です。
4分割法は建物の各階平面を方向ごとに4分割し、外周側にあたる側端部分に配置されている耐力壁を考慮します。
4分割法の流れは次の通りです。
- 各階の平面を方向ごとに4分割する
- 各側端部分の必要壁量を計算
- 各側端部分の存在壁量を計算
- 壁量充足率の計算
- 壁率比の計算
各階の平面を方向ごとに4分割する
各階の平面図を縦に4分割、横に4分割します。
各側端部分の必要壁量を計算
縦方向では上1/4と下1/4部分、横方向では右1/4と左1/4部分の必要壁量を算出します。
各側端部分の存在壁量を計算
縦方向では上1/4と下1/4部分、横方向では右1/4と左1/4部分の存在壁量を算出します。
壁量充足率の計算
各側端部分の壁量充足率を計算し、すべてが1.0超であればバランスのよい配置条件に適合すると判断できます。
壁率比の計算
算出した壁充足率のうち、ひとつでも1.0超にならなかった場合は壁率比で再判定します。
計算式は次の通りです。
壁率比=算出した壁充足率の小さい値÷算出した壁充足率の大きい値
壁率比が0.5以上であればバランスのよい配置条件に適合すると判断できます。
直下率と壁量バランスが大事
耐震性を効率よく高めるには、耐力壁をできるだけ多く、そしてバランスよく配置する必要があります。
また地震に強い家づくりを検討するうえで、直下率を考慮することも重要です。
しかし、理想の間取りを実現するために直下率を犠牲にすることはよくあるケースで、「直下率が低い」ことがそのまま「耐震性が低い」と決めつけることはできません。
直下率に固執するのではなく全体のバランスを検討することが重要で、適切な構造設計を根拠とする必要があるといえるでしょう。
結局直下率は重要なのか?
今回は直下率に関連して詳しく解説してきました。
間取りを検討するとき、理想を優先すると直下率の低下につながることがあります。
しかし直下率の低下は関連する部分の構造強化で耐震性は確保できます。
地震に強い住宅を実現するには、直下率も大事ですが耐力壁の量やバランスなど総合的に検討することが重要なのです。
理想の家づくりの参考にしていただけると幸いです。