自宅に囲炉裏を置く。基本的な使い方や注意点、楽しみ方などを紹介
古民家でよく見かける囲炉裏(いろり)は、自宅にも設置できます。
囲炉裏がある家は、和のテイストを取り入れるだけでなく、暖を取ったり料理をしたりとさまざまな使い方があります。
自宅に囲炉裏を設置しようか悩んでいる方は、使い方とあわせて設置する際のコツを確認しておきましょう。
本記事では、囲炉裏の基本的な使い方と注意点を詳しく解説します。
自宅に囲炉裏を設置する際のコツをあわせて解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
囲炉裏(いろり)とは
囲炉裏とは、室内の床を四角に切り取って、灰を敷き詰めて設けた炉です。
炭や薪を燃やして料理や暖を取るために使用します。
天井から自在鉤(じざいかぎ)と呼ばれる金具を吊り下げ、釜ややかんを取り付けている囲炉裏を設けている古民家があります。
古来の日本家屋では、リビングとなる家族が団らんするスペースに囲炉裏を設けて、食事やコミュニケーションを取る場として使用されていました。
現在でも自宅に囲炉裏を置き、食事を楽しんだり家族と団らんしたりと、さまざまな使い方ができます。
囲炉裏の使い方
囲炉裏を使用する際には、薪や炭を燃やす必要があります。
また薪や炭を燃やして出た灰を、暮らしの中で活用することも可能です。
自宅に囲炉裏を設置しようと考えている方は、薪と炭・灰の使い方を確認しておきましょう。
薪の使い方
囲炉裏に薪を使う際は、まずガス火で火を熾(おこ)しましょう。
火熾し器に、火種用の薪を入れ、赤くなるまでガス火で燃やします。
火熾し器だけでは火が落ちるリスクがあるため、薪を火鉢に移動させましょう。
次に囲炉裏の中に薪を移動させますが、この際に空気の流れを作るよう、薪を縦にして寄せて置いてください。
灰をかけて火力を調整することで、囲炉裏で暖を取ったり料理をしたりと、さまざまな使い方ができます。
炭の使い方
炭の使い方は、薪と同じくガス火で炭を燃やします。
火が熾きた炭を囲炉裏に移動させて、火力を調整すれば完成です。
燻炭は900度近い高温になるため、囲炉裏で陶器を焼くことも可能です。
囲炉裏では、温度が一定に保たれるため、陶器が割れる心配もありません。
縄文土器も囲炉裏で焼いたものと推測されており、火力を灰で調整すれば、素焼きから本焼きまでできます。
灰の使い方
灰は、囲炉裏の火力を調整するために使用しましょう。
火の熾った炭や薪に灰をかけて、空気を遮断することで火力を弱められます。
完全に火を消す際は、火消し壺に炭や薪を入れて完全に空気を遮断してください。
なお、囲炉裏の灰は暮らしの中で、次のように活用できます。
- 山菜の灰汁抜き
- こんにゃく作りの凝固剤
- 融雪剤
- 畑にまいて土壌改良
- 石鹸づくり
囲炉裏の用途・楽しみ方4選
囲炉裏は、さまざまな用途で使えますが、主な楽しみ方は次のとおりです。
- 暖を取る
- リラックスする
- 料理する
- 防虫・防腐に利用する
それぞれの楽しみ方を確認して、自宅に囲炉裏を設置するべきか検討しましょう。
暖を取る
囲炉裏の代表的な楽しみ方は、暖を取ることです。
囲炉裏の炭は、900度ほどと高温なので、周囲は焚火の周辺にいるように暖かいです。
寒い冬場や寒冷地に住んでいる場合は、囲炉裏を使用することで快適な室温を維持できます。
暖房やストーブで暖を取るのとは異なり、火を眺めながら身体を暖められ、ノスタルジックな雰囲気を過ごせます。
また、囲炉裏は単に身体を暖めるだけではなく、家族や友人と暖を取りながら団らんするために、使用されるケースが多いです。
囲炉裏を団らんスペースとして使用し、家族や友人と食事や会話を楽しめば、特別な時間を過ごせます。
リラックスする
囲炉裏は、身体を温めるだけでなく、リラックス効果が期待できます。
焚火やキャンプファイヤーを囲んでいるときに、穏やかな気持ちになるように、火にはリラックス効果があるのです。
火のゆらぎは、「1/fゆらぎ」と呼ばれる波動の一種で、心臓の鼓動や打ち寄せる波の音と同じリズムを持ちます。
他にも、小川のせせらぎや木の年輪などが「1/fゆらぎ」を持っており、自然なリズムによって不思議と穏やかな気持ちになります。
囲炉裏の炎を見つめていると、「1/fゆらぎ」によってリラックスできるため、一人で落ち着きたいときや団らんしたいときにおすすめです。
料理する
囲炉裏は、炭や薪によって高温になるため、炎を利用して料理ができます。
主に串に刺した魚や肉を囲炉裏の灰に刺し、焼き魚や焼肉を楽しむことが可能です。
囲炉裏で焼いた魚や肉は、炭や薪の香りがつき燻製のような風合いを味わえます。
他にも、餅やスルメ・野菜、チーズフォンデュを作れるため、囲炉裏料理を楽しめます。
自宅に囲炉裏を設置した際には、風情を楽しみながら炭火料理を堪能してください。
ただし、焼くものによっては油が炭や薪にかかり煙が出るため、火元から少し離れた位置で串焼きにしましょう。
防虫・防腐に利用する
囲炉裏から立ち上がる煙には、防虫・防腐効果があります。
天井裏を防虫・防腐し、柱や梁を煤(すす)でコーディングすることで、家を長持ちさせられます。
囲炉裏の煙は、天井裏まで充満するため、虫だけでなくネズミなどの害獣を寄せ付けません。
屋根裏まで煙が充満すれば、防腐作用により屋根が腐りにくくなり、雨漏りを防げます。
そのため、囲炉裏部屋では、夏場にも囲炉裏の火を絶やしません。
ただし、自宅に囲炉裏を設置する際には、火災や煙による一酸化炭素中毒に注意する必要があります。
自宅で囲炉裏を使用する際は、煙が充満しすぎないよう適切に換気してください。
囲炉裏を使用する際の注意点
自宅で囲炉裏を使用する際は、次のリスクに注意しなければなりません。
- 火災リスク
- 一酸化炭素中毒リスク
囲炉裏は、さまざまな楽しみ方ができますが、炎と煙が出るため取り扱いには十分に注意する必要があります。
それぞれのリスクを確認して、自宅で囲炉裏を使う際には注意しましょう。
火災リスク
囲炉裏は、炎が出るため火災リスクには十分に注意しなければなりません。
炭火を適切に処理できていない場合、家に炎が燃え移るリスクがあるため要注意です。
囲炉裏の自在鉤には、木の魚が吊るされているケースが多いですが、これは鍋や鉄瓶を支える棒の長さを調節するためにあります。
木の魚を使用する理由としては、火の神様を喜ばすためのお供えの意味と、水に通じる魚が火事を避けるお守りとしての役割を担っています。
囲炉裏は、適切に扱わないと火事になるリスクがあるため、火災報知器の設置や囲炉裏の火や炭の後始末を徹底することが大切です。
囲炉裏を離れる際は、灰をかけて火力を調整するか、火消し壺に火種を入れて鎮火するよう徹底してください。
一酸化炭素中毒リスク
囲炉裏は、炎だけでなく煙が出るため、一酸化炭素中毒のリスクがあります。
現在の住宅は、気密性が高く外へ煙が逃げにくい構造になっているため、注意しなければ一酸化炭素中毒が熾りやすいです。
自宅で囲炉裏を使用する際は、窓を開けて換気するか高性能な換気システムを使用する必要があります。
窓を開ける方法は、周囲に家が密集している住宅地では、近隣住民に迷惑をかけてしまうためおすすめできません。
囲炉裏の煙によって、洗濯物に臭いや汚れをつけたり喘息を引き起こしたりと、重大なトラブルにつながるリスクがあるため、周囲の家への配慮が必要です。
換気システムを使用する際は、寒冷地や冬場では外の冷たい空気を給気する可能性があるため、冷暖房効率が低下してしまいます。
熱交換器システムを導入した換気システムであれば、排気による熱を給気に還元できるため、寒い冬場でも冷暖房効率が損ないません。
また、一酸化炭素警報機を導入すれば、一定以上の一酸化炭素濃度になった際にブザーや音声で警報してくれます。
囲炉裏を使用する際は、火災と一酸化炭素リスクを十分に理解して、煙の換気と火の消火を徹底してください。
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囲炉裏の燃料
囲炉裏の燃料は、大きく分けて次の2種類です。
- 薪
- 木炭
それぞれの燃料によって、炎のゆらぎ方や温度が変わります。
それぞれの特徴を確認して、囲炉裏に使用する燃料を選びましょう。
薪
薪は、炎のゆらぎを楽しみたい方におすすめの燃料です。
薪の炎は大きくゆらぎ、煙や煤も出るので防虫・防腐効果が期待できます。
また、薪は炭より火力が高いため、囲炉裏で鍋料理など火力が必要な料理を楽しみたいときにおすすめです。
ただし、煤が室内に付着してしまうため、内装デザインを汚してしまいます。
煤がついても問題がない内装にするか、すすがついても良い囲炉裏部屋をつくりましょう。
木炭
木炭は、薪に比べて煙や臭いが出にくいメリットがあります。
薪より燃焼時間が長く、少量でも火力を保てます。
木炭を使用する囲炉裏では、鉄瓶や茶釜でお湯を沸かし、茶室のような使い方をすることが多いです。
高気密住宅など煙の処理が難しい家では、薪ではなく木炭を使用することをおすすめします。
また、近年では木炭より燃焼時間が長く、煙や臭いが出ない備長炭も人気です。
備長炭は木炭より高価ですが、一般住宅でも囲炉裏を楽しみやすいメリットがあります。
自宅に囲炉裏を設置する際のコツ
自宅に囲炉裏を設置する際のコツは、次のとおりです。
- 囲炉裏の内装制限を確認しておく
- 置き囲炉裏や囲炉裏テーブルを検討する
- 内装デザインと統一させる
- 換気システムを充実させる
それぞれのコツを押さえた上で、自宅に囲炉裏を設置しましょう。
囲炉裏の内装制限を確認しておく
自宅に囲炉裏を設置する際には、囲炉裏の内容制限を確認しておきましょう。
囲炉裏は火を使う設備なので、万が一の火災に備えて内装が激しく燃え広がらないように、内装制限が設けられています。
囲炉裏の内装制限は、次のとおりです。
- 囲炉裏の長幅が90cm以下
- 囲炉裏の可燃物燃焼部分にあたる壁や天井の柱や下地は特定不燃材料を使用する
- 囲炉裏の可燃物燃焼部分以外にあたる壁と天井は難燃材料などで仕上げる
囲炉裏のサイズを調整し、周囲の内装を特定不燃材や難燃材などで仕上げて、火災が広がらないよう予防してください。
置き囲炉裏や囲炉裏テーブルを検討する
自宅に囲炉裏を設けたい場合は、置き囲炉裏や囲炉裏テーブルを検討しましょう。
置き囲炉裏や囲炉裏テーブルは、火鉢やカセットコンロと同じく内装制限の対象外です。
床材を切り取る必要もなく、施工コストがかかりません。
置き囲炉裏や囲炉裏テーブルは、ネットショッピングでも購入できるため、手軽に囲炉裏を設置できます。
しかし、置き囲炉裏や囲炉裏テーブルを設置する場合にも、火を使うことには変わりないので、火災リスクや一酸化炭素リスクへの備えが必要です。
内装デザインと統一させる
自宅に囲炉裏を設置する際は、内装デザインと統一させることも大切です。
ヨーロピアンやカリフォルニアスタイルの内装に囲炉裏を設置すると、空間がちぐはぐになってしまい、統一感が生まれません。
家全体の内装デザインを変えなくても、囲炉裏がある部屋を和モダンに仕上げると統一感が生まれます。
自宅に囲炉裏を設ける際は、和室や和モダンな雰囲気で囲炉裏部屋を仕上げましょう。
換気システムを充実させる
自宅で囲炉裏を使う際は、換気システムを充実させることが大切です。
換気システムは、大きく分けて次の3種類があります。
換気システムの種類 | 特徴 |
第1種 | 給気と排気の双方を機械で行う |
第2種 | 給気は機械で行い排気は自然排気で行う |
第3種 | 給気を自然給気で行い排気を機械で行う |
第1種換気システムは、給気と排気の双方を機械で行うため、設置コストとランニングコストが高い傾向にあります。
しかし、換気性能が優れているため、囲炉裏を使う部屋は第1種換気システムがおすすめです。
安定的に空気を入れ替える高性能な換気システムを導入することで、一酸化炭素中毒のリスクを軽減できます。
第一種換気システムはこれが最適?アメニティエアコンとセットで使えるガデリウスの「RDKR」とは
自宅に囲炉裏を設置してモダンな雰囲気を楽しもう
自宅に囲炉裏を設置すれば、モダンな雰囲気を楽しめます。
囲炉裏は、家族団らんや料理を楽しむ場として使用でき、寒い冬には炎で暖を取れるため便利です。
しかし、火災や一酸化炭素中毒のリスクがあるため、火の取り扱いには十分に注意して、使用する際には適切に換気する必要があります。
自宅に囲炉裏を設置したい場合は、内装制限や日常生活を考慮した上でよく検討してください。
また、床を切り取らずにすむ置き囲炉裏などの選択肢もあるということは覚えておくと良いでしょう。