室内の負圧とは?第3種換気システムや高気密住宅との関係性を徹底解説
家を建てる際には、快適な室内環境を維持するために、換気システム選びが重要になります。
室内が負圧になると、外からの空気が自然に室内へ入り込むため、自動的に換気できます。
換気計画を立てる際は、負圧と正圧の違いを理解して、住まいの気候やライフスタイルに合った換気システムを選ぶことが重要です。
家の換気計画を立てるために、負圧と換気システムの特徴を確認しておきましょう。
本記事では、負圧とは何か、仕組みや日常生活の具体例を交えて解説します。
第3種換気システムや高気密住宅との関係性をあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
負圧とは
負圧とは、建物内部の空気圧力が外部より低い状態です。
空気は、気圧の高い方から低い方へ流れる性質があり、負圧の場合は外の空気が室内へ流れ込みます。
そのため、外の新鮮な空気が自動的に室内へ入り込み、室内の空気を外へ排出できます。
負圧を活用した換気方法を採用した換気システムがあり、負圧や正圧の違いを把握しておくことが大切です。
換気システム選びの参考として、換気と空気圧力に関する次のポイントを確認しておきましょう。
- 正圧とは
- 圧力が及ぼす室内環境への影響
- 負圧の仕組み
- 日常生活の具体例
それぞれのポイントを押さえて、負圧と正圧がもたらす室内環境への影響を把握しましょう。
正圧とは
正圧とは、負圧の逆で室内の空気圧力が外より高い状態を指します。
室内の空気圧が高いため、室内に滞留する空気が自動的に外へ排出されます。
室内から空気が外に流れるため、外からの花粉やホコリなどの異物が室内へ入り込みにくいです。
外の臭いや湿気の侵入も防げるため、病院の無菌室やクリーンルームなどでも、正圧による環境維持が行われています。
一般住宅では、リビングや寝室など空気を新鮮に保ちたい場所に、正圧が使用されやすいです。
圧力が及ぼす室内環境への影響
正圧と負圧を使い分けることで、室内環境を清潔に保てます。
正圧は、花粉やホコリなど有害物質の侵入を防ぎ、負圧は汚れた空気を室外へスムーズに排出できます。
ただし、正圧が強すぎる場合、室内の空気が過剰に漏れて冷暖房効率が悪くなるため要注意です。
負圧が強すぎる場合は、外の空気を過剰に取り込み、花粉やPM2.5などの有害物質が室内へ侵入してしまいます。
快適な室内環境を維持するためには、空気圧を適切にコントロールして正圧と負圧を使い分けることが大切です。
負圧の仕組み
負圧のイメージがつかない方は、空のペットボトルをイメージすると仕組みを理解しやすいです。
例えば、ペットボトルの飲み口から空気を吸い込むと、中の空気が減っていきます。
空気が減ってくると、ペットボトル内が負圧の状態になり、飲み口から舌が引っ張られます。
つまり、ペットボトルが内側へ向けて引っ張る力が生じており、外の空気を自然と取り込もうとしているのです。
負圧の状態でペットボトルの底に穴を開けて、飲み口から空気を吸い込むと、底の穴から空気が入り込みます。
室内が負圧の状態では、空のペットボトルと同じように、外からの空気を自然と取り込む力が働きます。
日常生活の具体例
正圧と負圧の仕組みは、日常生活でも活用されています。
例えば、調理場のレンジフードを使用している状態で、玄関の扉を開けようとすると、扉が重く感じます。
この状態では、レンジフードを使用することで室内が負圧になり、外の空気が室内へ入り込もうとするため、扉が開きにくいのです。
そのため、調理場のレンジフードは負圧を利用して、料理による煙や臭いを効率的に外へ排出しています。
他には、公衆トイレも負圧の状態をつくり、臭いが外へ漏れないよう工夫しています。
反対に、オフィスビルの玄関や病院の無菌室は、正圧の状態にして、外からの空気が室内へ入り込まないよう工夫しているのです。
室内を負圧にする第3種換気システムとは
換気システムは、大きく分けて第1種〜第3種の3種類あります。
中でも負圧を利用した換気システムは、第3種換気システムです。
第3種換気システムは、自動給気と機械排気を組み合わせた換気システムです。
第3種換気システムは、負圧を利用しているため、外の湿気や臭いが室内に侵入しにくいです。
そのため、室内の空気を新鮮に保ち、快適な住環境を維持できます。
さらに第3種換気システムでは、排気を機械ファンで行いますが、給気は自然給気です。
給気フィルターを繰り返し洗って使用するだけで、室内に新鮮な空気を取り込めるため、メンテナンスコストを抑えられます。
ただし、第3種換気システムでは、外の空気を直接室内へ取り込むため、寒冷地や寒い冬には給気で室温を下げるリスクがあります。
寒冷地で第3種換気システムを採用する場合は、冷気対策を実施しているメーカーのシステムを利用しましょう。
他にも、住宅の気密性が低い場合は、スキマから外の空気が入り込んでしまい、給気口から十分な給気ができません。
換気性能を向上させるために、家の気密性を高めておくことが大切です。
負圧を利用した第3種換気システムを採用するべきか検討するために、第1種と第2種換気システムの特徴を確認しておきましょう。
第3種換気のメリット・デメリットとは?第1種との違いや換気システムの選び方を解説!
第1種換気システムとは
第1種換気システムでは、給気と排気の双方を機械で行います。
機械によって空気圧をコントロールし、正圧と負圧を使い分けます。
給気と排気どちらも機械で行うため、効率的な換気により快適な住環境を維持しやすいです。
ただし、給気口と排気口どちらも機械を設置する必要があり、初期費用とランニングコストが高いです。
第2種換気システムとは
第2種換気システムでは、給気を機械で行い排気を自然排気で行います。
給気口のファンが強制的に空気を室内へ送り込み、正圧の状態である室内から、空気が外へ自然に排出されます。
そのため、外の臭いや汚れた空気が室内へ入り込まず、清潔な空気のみを給気することが可能です。
ただし、室内の空気が思うように排気されない場合は、結露が発生するリスクがあるため要注意です。
負圧にする目的
室内を負圧にする目的とは、室内の汚れた空気や湿気・臭いを外へ排気し、清潔な室内環境を維持することです。
例えば、トイレや浴室・調理場を負圧にすることで、他の部屋に臭いや湿気が流れないよう抑制できます。
日常生活で実感できる負圧の具体的な効果は、次のとおりです。
- トイレや浴室での負圧換気
- 湿気や有害物質を負圧で排出
- 防塵・防臭につながる
それぞれの効果を確認して、負圧を利用した第3種換気システムの採用を検討しましょう。
トイレや浴室での負圧換気
トイレや浴室は、負圧換気により臭いや湿気が他の部屋に流れにくいです。
センサー付きの換気扇を設置すれば、使用中のみ自動で排気が行われ、換気の手間を減らせます。
浴室では、湿気が大量に発生するため、負圧換気により家中へ湿気が広がらないよう対処することが大切です。
湿気は結露によるカビの発生へとつながるため、家を長持ちさせるために、浴室乾燥機と負圧換気で除湿しましょう。
湿気や有害物質を負圧で排出
負圧換気は、湿気や有害物質を効率的に外へ排出できるため、家と住民の健康保持につながります。
シックハウス症候群や花粉症の予防、建材から発生する化学物質の排出に効果的です。
防塵・防臭につながる
負圧換気は、防塵・防臭につながるため、飲食店の厨房でも活用されています。
厨房から出る煙や臭いを客席に広げないよう、調理場を負圧にしているのです。
負圧と正圧を使い分けて、空気の流れをコントロールすることで、室内環境だけでなく設備の品質保持にもつながります。
換気システムを選ぶ際の判断基準
換気システムを選ぶ際の判断基準として、次のポイントを重視しましょう。
- メンテナンス性
- 住まいの気候やライフスタイル
- 断熱性能とのバランス
- 稼働音の大きさ
換気システムにはそれぞれメリットとデメリットがあり、どのシステムを選ぶべきかは人によって最適解が変わります。
それぞれのポイントを確認して、自分に合った適切な換気システムを採用してください。
メンテナンス性
換気システムを選ぶ際は、メンテナンス性を重視することが大切です。
メンテナンスは、換気システム本体だけでなく給気口・排気口のフィルターまで行う必要があります。
ホコリやカビが詰まった給気口では、汚れた空気を室内へ送り込んでしまいます。
また、設備のメンテナンスを疎かにすると、換気効率が低下するため、メンテナンス性が良いシステムを選ぶことが大切です。
メーカーによってメンテナンス性や手入れの方法が異なるため、導入後の手間や換気性能を比較検討して、採用するシステムを選びましょう。
住まいの気候やライフスタイル
換気システム選びは家づくりに関する重要なポイントなので、住まいの気候やライフスタイルを重要視するべきです。
例えば、寒冷地に住むのであれば第3種換気システムを選んだ場合に、寒い空気が室内へ入り込むリスクが増えます。
そのため、第1種換気で給気と排気を機械で行い、換気で寒さを感じにくくする工夫が必要です。
理想の換気方法は人によって異なるため、家族構成や家族の好みを考えて、自宅に適した換気システムを選びましょう。
断熱性能とのバランス
換気と断熱性能のバランスは、住環境を左右するため、換気システムが重要です。
換気を強化すると、外気が室内へ侵入したり室内の空気が外へ逃げたりと、冷暖房効率が低下するリスクがあります。
熱交換型換気システムを採用すれば、排気の熱を再利用して暖かい空気を室内へ取り込み、冷暖房効率を向上させられます。
家の断熱性能を向上させれば、換気性能を高めても快適な住環境を維持できるため、断熱性能と換気性能のバランスを重視しておきましょう。
稼働音の大きさ
24時間換気システムは、常に稼働し続けるため、稼働音の大きさを重要視することが大切です。
稼働音の大きさはメーカーによって変わるため、モデルハウスなどで実際の稼働音を確認してから、設置数や設置場所を決めましょう。
高気密住宅と負圧の関係性
高気密住宅は、一般的な住宅より負圧が起こりやすいです。
多少スキマが開いている住宅では、外から自然に空気が入ってくるため、負圧が起こりにくいです。
負圧が起きると、扉や窓が開きにくくなり、水滴も室内へ入り込もうとするため、雨漏りが起きやすくなります。
高気密住宅を建てる際は、負圧による問題点を理解した上で、適切に対処できるよう工夫することが大切です。
高気密住宅で負圧問題を対策する方法
高気密住宅で負圧問題を対策する方法は、次のとおりです。
- 同時給排気型のレンジフードを活用する
- 差圧給気口を設置する
それぞれの対処法を実践して、高気密住宅の負圧問題を解消しましょう。
同時給排気型のレンジフードを活用する
同時給排気型のレンジフードを活用すると、負圧問題を解消できます。
レンジフードを使用すると、キッチンの空気を外へ排出するため、室内が負圧になりやすいです。
同時給排気型のレンジフードは、排気量に合わせて給気口から空気が入り込むため、負圧問題を解消できます。
また、レンジフードを使用する際に、窓を少しだけ開けておくと、負圧になりにくいです。
差圧給気口を設置する
高気密住宅の負圧問題を解消するアイテムとして、差圧給気口がおすすめです。
差圧給気口を設置すると、室内が負圧になったタイミングで自動的に給気できます。
パスカルダンパーとも呼ばれ、負圧問題を解消するために使用されますが、給気口が開いている間は音漏れのリスクがあるため注意しましょう。
負圧問題を解消すれば高気密住宅で快適な暮らしを実現できる
同時給排気型や差圧給気口を活用して、レンジフード負圧問題を解消すれば、高気密住宅で快適な暮らしを実現できます。
負圧は、外の湿気や臭いが室内に侵入しにくい構造で、室内の空気を新鮮な状態に維持しやすいです。
しかし、負圧により扉や窓が開きにくく、雨漏りのリスクが高まるなどデメリットも存在します。
換気システムを選ぶ際には、メンテナンス性や住まいの気候、ライフスタイルを重視して、自宅に適した換気方法を選びましょう。
高気密住宅で負圧問題を解消すれば、外の空気が室内に入り込まず、冷暖房効率を向上できます。
断熱性能を高めた高気密高断熱住宅であれば、年中快適な室温を維持し、結露の発生を抑制できるため家を長持ちさせられます。
家を長持ちさせるために、自分に合った換気システムを採用した高気密高断熱住宅を建てましょう。
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