鉄筋とコンクリートは相性が良い!RC造のメリット・デメリットを解説

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突然ですがクイズです。日本最古の鉄筋コンクリート集合住宅はどこだか知っていますか?

現在では、当たり前のように点在する鉄筋コンクリート造の建物ですが、実は鉄筋とコンクリートは非常に相性が良い素材です。

鉄筋とコンクリートを使用した家は、耐震性や断熱性が高く、長持ちしやすい特徴があります。

これから家を建てようか悩んでいる方は、家づくりの参考として鉄筋とコンクリートの相性を確認しておきましょう。

本記事では、鉄筋コンクリート造のメリットとデメリットを詳しく解説します。

RC造とS造の違いもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

鉄筋とコンクリートは相性が良い

多くの建物が鉄筋コンクリート造(RC造)で造られているように、鉄筋とコンクリートは相性が良い素材です。

東京都都市整備局が実施した「住宅着工統計」によると、平成25年~令和4年にかけて鉄筋コンクリート造で建てられた建物が多い傾向にあります。

年度 木造 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 鉄骨造 その他
平成25年 29.8% 5.4% 36.8% 27.8% 0.2%
平成26年 26.3% 7.5% 34.7% 31.3% 0.2%
平成27年 27.3% 2.8% 36.1% 33.6% 0.2%
平成28年 27.2% 5.6% 32.4% 34.3% 0.4%
平成29年 25.7% 5.0% 35.0% 34.1% 0.1%
平成30年 29.1% 2.8% 32.5% 35.5% 0.1%
令和元年 27.4% 1.5% 35.9% 35.0% 0.2%
令和2年 30.7% 1.2% 38.5% 29.3% 0.3%
令和3年 26.6% 3.5% 34.5% 35.2% 0.2%
令和4年 29.2% 3.1% 38.8% 28.8% 0.1%

参照元:住宅着工統計 調査結果の概要(令和4年)|東京都都市整備局

鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリート双方の弱点を補い合い、強度の高い構造を実現しています。

そのため、木造や鉄骨造より鉄筋コンクリート造で建物が造られることが多いです。

鉄筋コンクリート造は、耐久性・耐火性・遮音性に優れた住まいを実現でき、家を長持ちさせられます。

優れた耐久性を確保できる理由として、鉄筋とコンクリートが合わさることで、次のような効果があるからです。

  • 圧縮力を補強できる
  • 引っ張り力を補強できる
  • 錆つきを防止できる

鉄筋コンクリート造で家を建てるべきか悩んでいる方は、鉄筋とコンクリートがどのように相性が良いかを確認しておきましょう。

圧縮力を補強できる

鉄筋とコンクリートを合わせると、圧縮力を補強できます。

コンクリートは圧縮に強く、鉄筋は弱い特性があります。

鉄筋だけで基礎を造ると圧縮力が不足するため、コンクリートを組み合わせることで圧縮力を補強できるのです。

圧縮鉄筋の量が多いほど、コンクリートにかかる負荷が軽減され、靱じん性が向上します。

靱じん性とは、金属など素材の粘り強さを意味し、圧力によるひび割れに耐えられる性質のことです。

鉄筋とコンクリートを組み合わせることで、圧縮力を補強し破損しにくい外壁を実現できます。

引っ張り力を補強できる

鉄筋は圧縮に弱いが引っ張りに強く、コンクリートは反対に圧縮に強く引っ張りに弱い素材です。

そのため、コンクリートの弱点を補強するために鉄筋を組み合わせて、引っ張りに耐えられる構造にしています。

鉄筋とコンクリートを組み合わせれば、圧縮力だけでなく引っ張り力を補強できます。

コンクリートは、引っ張られるとひび割れによって破損してしまうため、鉄筋を組み合わせて強度を高めているのです。

錆つきを防止できる

鉄筋コンクリート造は、鉄筋をコンクリートで包んだ素材です。

鉄筋は経年劣化によって錆(サビ)が生じてしまうため、年月とともに強度が低下します。

そこで鉄筋を強アルカリ性のコンクリートで包むことで、錆付きを防止しているのです。

鉄筋をコンクリートで包めば、錆付きを防止できるだけでなく、塩害や有害物質による劣化を防止できます。

また鉄筋は熱に弱い性質がありますが、コンクリートで包み込めば耐火性を付与できます。

鉄筋とコンクリートは、それぞれの弱点を補い合える相性が良い素材です。

鉄筋とコンクリートを組み合わせる際のポイント

コンクリートと鉄筋を組み合わせる際は、次のポイントを理解しておきましょう。

  • コンクリートの中性化
  • 水セメント比

上記のポイントは、それぞれコンクリートの性質に関する用語です。

鉄筋コンクリート造の建物に住みたい方は、コンクリートの性質について理解を深めておきましょう。

コンクリートの中性化

コンクリートの中性化とは、強アルカリ性のコンクリートが水や空気の影響で酸性に傾くことです。

強アルカリ性のコンクリートで鉄筋を包み込むことで、錆付きを防止しています。

しかしコンクリートの中性化が起きると、鉄筋が錆びやすくなり耐久性の劣化へとつながります。

そのため、鉄筋コンクリート造ではコンクリートの中性化に対処するため、次の工夫が必要です。

  • コンクリートとの密着性を高めるために鉄筋に一切の防錆処理をしない
  • 鉄筋を覆うコンクリートの厚さを十分に確保する

上記の工夫を施すことで、鉄筋コンクリート造はコンクリートの中性化に対処し、鉄筋の錆を防止しています。

水セメント比

水セメント比は、コンクリートの強度を決める水とセメントの割合です。

セメントの重さに対する水の重さを比率で表すことで、コンクリートの強度を見極めます。

例えば、水セメント比50%はセメントの重さに対して50%の比率で水が入っていることを意味します。

水セメント比が高いと、コンクリート内の水を保有する比率が高くなるため、強度が低いです。

反対に水セメント比が低いと、コンクリートの割合が多くなるため、強度が高く中性化の進行を遅らせられます。

水セメント比が低いコンクリートを使用することで、強度の高い鉄筋コンクリート造を実現できます。

鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の違い

鉄筋コンクリート造(RC造)と混合されやすい材質として、鉄骨造(S造)があります。

それぞれの違いを理解するために、次のポイントを確認しておきましょう。

  • RC造とS造の特徴の違い
  • 軽量鉄骨造と重量鉄骨造の違い
  • SRC造とは

RC造とS造の特徴の違い

RC造とS造の違いは、構造材が異なることです。

RC造(Reinforced Concrete)は鉄筋とコンクリートを組み合わせて、それぞれの弱点を補い合うことで高い強度を実現しました。

対して、S造(Steel)は鉄の合金である鋼を建物の骨組みに使用しており、RC造より軽い性質があります。

RC造は、柱や梁など強度が必要な箇所に、鉄筋で造った枠組みにコンクリートを流し込み、高い耐久性を確保しています。

S造は、鉄骨自体の粘り強いしなやかさが特徴的で、コンクリートを使っていない分RC造より軽量です。

そのため、S造は体育館や高層ビルなど大規模な建物に適しています。

しかし、S造はしなやかで軽量な特性からRC造より揺れやすい特徴があるため、耐震性を確保したいならRC造がおすすめです。

軽量鉄骨造と重量鉄骨造の違い

S造には、軽量鉄骨造と重量鉄骨造の2種類があります。

軽量鉄骨造と重量鉄骨造の違いは、鋼材の厚みです。

一般的に鋼材の厚みが6mm以下のものを軽量鉄骨造、6mm以上のものを重量鉄骨造と呼びます。

軽量鉄骨造は、材料が軽く扱いやすいため、工期を短縮できるメリットがあります。

工期が短い分、施工費用を抑えられるため、賃貸アパートなどでも採用されるケースが多いです。

対して、重量鉄骨造は柱や梁が太くて丈夫なので、鉄骨の本数を減らしても十分な耐久性を確保できます。

そのため、広い空間を確保しやすく、自由な間取り設計が可能です。

大型のホームセンターなど広い空間を確保したい建物は、重量鉄骨造で設計されるケースが多いです。

SRC造とは

SRC造は、「Steel Reinforced Concrete」の略称で、鉄筋鉄骨コンクリート造の意味を持ちます。

SRC造は、RC造と似た特性を持ちますが、柱や梁の支柱に鉄骨を採用している点が違います。

鉄骨を支柱にして、枠組みを鉄筋とコンクリートで覆っているため、RC造とS造双方のメリットを兼ね備えた構造です。

SRC造は、高い耐久性や耐震性を備えた構造ですが、工期と建築費用が高額なので主に高層建築物で採用されています。

鉄筋コンクリート造(RC造)のメリット

鉄筋コンクリート造(RC造)のメリットは、次のとおりです。

  1. 耐震性が高い
  2. 断熱性が高い
  3. 耐火性が高い
  4. 遮音性が高い
  5. デザインの自由度が高い
  6. 耐用年数が長い

それぞれのメリットを確認して、鉄筋コンクリート造を採用するべきか検討しましょう。

メリット1.耐震性が高い

鉄筋コンクリート造のメリットは、耐震性が高いことです。

鉄筋は引っ張りに強く、コンクリートは圧縮に強いため、双方の特性をあわせ持つ鉄筋コンクリート造は高い耐震性を備えています。

建物全体の重量を面で支えるため、枠で支えるS造などの他の構造と比べて、揺れによるダメージを軽減できます。

縦方向と横方向どちらの揺れにも耐えられるため、高層ビルなどに採用されるケースが多いです。

メリット2.断熱性が高い

鉄筋コンクリート造は、柱と壁が一体化しておりスキマが生じにくいため、高い断熱性を確保できます。

断熱性が高い建物は冷暖房効率が良く、最小限のエネルギー消費で快適な室内環境を実現できます。

鉄筋コンクリート造のメリットは、光熱費を削減しながら、夏は涼しく冬は暖かい住環境を維持できることです。

メリット3.耐火性が高い

鉄筋コンクリート造は、1,000度の熱に数時間耐えられるほど高い耐火性を備えています。

隣家への延焼を抑えられるため、住宅が密集する都市部で使用されるケースが多いです。

鉄筋コンクリート造は、火災による被害を抑えられるため、火災保険料を木造の3分の1程度に抑えられます。

メリット4.遮音性が高い

鉄筋コンクリート造は、遮音性が高く騒音トラブルのリスクを回避できます。

コンクリートは、気密性が高く重量も大きいため、振動や音が伝わりにくいです。

外の喧騒が気にならず、家の生活音が外に漏れる心配が少ないです。

メリット5.デザインの自由度が高い

鉄筋コンクリート造は、他の構造では難しい自由度の高いデザインを実現できます。

鉄筋とコンクリートを組み合わせたRC造は、高い強度を備えているため、デザインの自由度が高いです。

家のデザインや間取りにこだわりたい方は、鉄筋とコンクリートがおすすめです。

メリット6.耐用年数が長い

鉄筋コンクリート造は、耐用年数が長いです。

木造住宅の耐用年数が22年であるのに対して、鉄筋コンクリート造の住宅は47年と2倍以上もあります。

構造・用途 用途 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 事務所用のもの

店舗用・住宅用のもの
飲食店用のもの

24年
22年
20年
木骨モルタル造のもの 事務所用のもの

店舗用・住宅用のもの

飲食店用のもの

22年

20年

19年

鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 事務所用のもの

住宅用のもの

飲食店用のもの

50年

47年

47年

れんが造・石造・ブロック造のもの 事務所用のもの

店舗用・住宅用・飲食店用のもの

41年

38年

参照元:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁

コンクリートは、木材や他の材質に比べて劣化しにくく、長持ちする特徴があります。

鉄筋コンクリート造(RC造)のデメリット

鉄筋コンクリート造(RC造)のデメリットは、次のとおりです。

  1. 建築費用が高い
  2. 重量が大きい
  3. 湿気がこもりやすい
  4. 増改築や取り壊しの費用が高い

メリットとデメリットの双方を確認した上で、鉄筋コンクリート造を採用するべきか検討しましょう。

デメリット1.建築費用が高い

鉄筋コンクリート造のデメリットは、建築費用が高いことです。

木造や鉄骨造より工期が長くなり、材料費が高いため、建築費用が高くなります。

木造住宅に比べて、鉄筋コンクリート造の住宅は坪単価で1.5〜2倍ほどの建築費用が必要です。

しかし、耐用年数が長いため、ランニングコストを含むトータルコストで考えた際には、木造より得をする可能性があります。

デメリット2.重量が大きい

鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートを使用しており、重量が大きいです。

建築する際には強固な地盤が必要であり、地盤が弱いエリアでは地盤改良工事を実施しなければなりません。

鉄筋コンクリート造の家を建てる際は、土地選びを慎重に行いましょう。

デメリット3.湿気がこもりやすい

鉄筋コンクリート造は、建築後の数年間はコンクリート内の水分が残っています。

さらに気密性が高く湿気がこもりやすいため、結露やカビが発生しやすいです。

結露やカビは、健康被害や家の構造部を劣化させる原因となるため、高性能な換気システムを導入するなど湿気対策が必要です。

デメリット4.増改築や取り壊しの費用が高い

鉄筋コンクリート造は、丈夫で長持ちするメリットがありますが、増改築や取り壊しの際は高い費用が発生します。

丈夫な壁を取り壊すには手間がかかり、取り換える部材も高いため、増築や取り壊しには高い費用を用意しなければなりません。

鉄筋コンクリート造の家は長持ちするが木造の耐震等級3でも十分

冒頭のクイズの答え…日本最古の鉄筋コンクリート集合住宅は軍艦島にある「30号棟」。

1916(大正5)年に完成し、2024年現在で築108年ですが未だ残っています。2020年3月28日に一部が崩落し、補強工事の計画も立てられていますが、改めて鉄筋コンクリートの強さを知らされますね。

とはいえ、鉄筋コンクリート造はマンションなどの集合住宅や高層ビルに採用されるケースが多いです。

もちろん一戸建てで採用する人もいますが、基本的には木造でも耐震等級が高ければ地震による倒壊の心配はありません

メリットデメリットをよく考慮した上で、どんな家にするか検討してください。

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