住宅の天井高について考えてみた。

WRITER
この記事を書いている人 - WRITER -

 

質問がありました。

 

ご質問:

いつも質問回答ありがとうございます。

現在、仕様打ち合わせ中です。住宅の天井高で悩んでいます。

リビングの天井高を2200mmにするか、2400mmにするか、どちらが良いと思いますか?

メリット・デメリットがあれば教えてください。

 

 

家の住空間を考える上で重要な住宅の天井高。

まず、一般的に多い天井高ってどれくらいなんでしょうか?

答えは、2400mm。

ハウスメーカーの中には天井高2700mmを売りにしているハウスメーカーもありますね。

ただ、ご注意ください。天井高が高いからと言って空間が広く見えるわけではありません。

そこで、今回はこの住宅の天井高について色々考えてみたいと思います。

 

住宅の居室の天井高は2100以上

現代の住宅を見ると、天井の高さを高く取って開放感を演出する工夫が見られます。特に、某大手ハウスメーカーの住宅は、2400以上の高い天井を売りにしたCMを流していたり、天井を高くするケースが多くみられます。

その影響かも知れませんが、「天井は高ければ高いほど良い」といった考え方が、ポピュラーになって来ているかもしれませんね。

しかし、その一方で、天井の高さを低く取り、全体の家の造りをコンパクトにまとめる施工方法もあります。そうすると、家自体の高さも抑えられ、外観のプロポーションも一般的な家と違って見える効果も期待出来るからです。

それでは、天井の高さの決まりはどの様になっているのでしょうか?

建築基準法で調べてみると、居室の天井の高さの基準は、2100mm以上と決まっています。ですから、2100mm以上の天井の高さはどうしても必要となります。

逆に言えば、法規の話だけをすると、今の標準的な天井の高さは2400ですが、2100や2200といった「低い天井」にすることも可能だと言えます。

「天井を低くしたコンパクトな家」を造ることも十分に可能なのです。

 

天井高2700のメリット・デメリットを考えてみた

ここで天井高2700のメリット・デメリットについて考えてみましょう。

天井を高くした時のメリット

高い天井のメリットには、次のような点があります。

開放感を持たせることが出来る

天井を高くすると空間が縦方向にも広がるために、開放感を持たせることが出来ます。高い天井は上下にも空間を広げることが出来るのです。

また、高い天井は、上下の動きを取り入れた間取りを造ることも可能にします。例えば、スキップフロアを造るためには、上下の広がりが不可欠です。

部屋を明るくできる

天井が高いと窓から差し込んだ光が部屋の奥まで届くため、室内が明るくなります。外からの光は、明るいだけではなく、やさしい雰囲気も演出します。

高い天井の部屋は、たくさんの自然光を取り入れたやさしい空間にすることが出来るのです。

リフォームの幅が広がる

天井の高さを高くすると、リフォームの可能性も広がります。

例えば、リフォーム後にシャンデリアなどを設置しても、高い天井であれば低さや圧迫感を感じません。また、本棚などを造り付ける場合なども、上に広がる大きくてスタイリッシュな物の設置が可能となります。

 

天井を高くした時のデメリット

その一方で、天井の高さを高くしてしまうと、次の様なデメリットも。

光熱費が上がる

天井高を上げてしまうと光熱費がアップしてしまいます。これは部屋の容積が増えてしまうからです。

通常の部屋の天井の高さは2400mmですが、2700mmの様な高い天井にしてしまうと部屋の容積が縦に増えてしまいます。エアコンはその増えた容積の空気全部を温度調整しなければならないので、それだけのエネルギーを消費してしまいます。

そして、エアコンの使うエネルギーの量は電気料金にそのまま反映します。そのために光熱費が上がってしまうのです。

建築コストが上がる

天井の高さを上げると建築コストも上がってしまいます。なぜかというと、天井を高くすると使用する内装材も必然的に増えてしまいます。

室内を構成する内装材には、ボード類や壁クロスなどの材料が必要ですが、天井高を上げると、上げた分だけ壁の面積が増えてしまうからです。

例えば、2400mmを2700mmの高さにすると、壁の量が大体11%増えます。その増加に比例する形で、壁を構成する材料も増えてしまい、その分だけ材料費や工賃のアップになるのです。

落ち着けないこともある

天井が上がってしまうと、返って落ち着かなくなったと感じられる方もいらっしゃいます。そして、これは特に狭い部屋の場合に感じることが多いようです。

高い天井は、部屋の横方向と縦方向の比率で考えると、縦方向が増えてしまうことになります。そうすると横方向の比率は逆に小さくなってしまい、その分狭く感じてしまうのです。

例えば、六畳を切る様な小さな部屋を考えてみると、天井が高いと逆効果となります。特にその部屋で寝られる場合には、天井が普通の部屋よりも遠いため、不安を感じてしまうかも知れません。

 

天井高2100、天井高2200など低い天井のメリット・デメリットは?

それでは、天井高さが2100、2200の低い天井の場合を見てみましょう。

天井を低くした時のメリット

天井高さが低いと次の様なメリットがあります。

光熱費が抑えられる

前述のとおり、天井の高さが上がると光熱費が大きく膨らんでしまいます。それを逆に言うならば、天井を低くすると、それだけ部屋の容積が小さくなり、高熱費を節約することが出来るのです。

寸法的には、2200mmの天井は2400mmの標準的な天井と比べると約92%になります。

また、2700mmの天井高さと比べると大体81%となります。その比率の分だけ室内の空気も減るので、エアコンが必要なエネルギーの量も少なくなり、光熱費も抑えられます。

照明器具などのメンテナンスがしやすい

天井が低いと、天井に設置してある設備のメンテナンスがしやすくなります。

天井に設置する設備には、火災報知器や照明器具等があります。これらは、今では長寿命化が進み、メンテナンスもあまり必要では無くなって来ました。

しかし、完全にメンテナンスフリーということでは無く、年月が経てば、どうしても故障等が懸念されます。そうなると交換が必要です。この時、天井の位置が低ければ器具の交換もしやすくなるのです。

また、器具の交換がしやすいことは、交換する時の安全性にも繋がります。交換のために使用する台が高い場合は、仮に転倒した時にケガが大きくなってしまいます。しかし、天井が低いと使用する台も低くて済むので、大きなケガには発展しにくくなるのです。

天井が低い方が落ち着く場合もある

天井が低いと返って落ち着く場合もあります。

例えば、寝室。

リラックスして寝るためには、天井高を低くして部屋全体をコンパクトにした方が、睡眠にとってより良い環境が作れる様になります。

また、天井を低く取ることに併せて、部屋の内装をシックにまとめれば、更に落ち着いた雰囲気に。天井を敢えて低くしたり、内装等の雰囲気を上手に組み合わせれば、より落ち着いた部屋造りが可能となるのです。

 

低い天井のデメリット

次に低い天井のデメリットを挙げてみます。

高さのある家具が入りにくい

通常の部屋の天井高さは2400mmとなっており、一般的な家具の高さもそれに合った高さの物が多く流通しています。

そのため、天井の高さが低い場合は、好みの家具が設置できない事も・・。例えば、食器棚などには背の高い物もあるので、注意が必要です。

また、本棚などの背の高い家具には、地震が来ても倒れない様にする突っ張り棒が付けられますが、天井が低いと入れる余裕が無く、設置が出来ない場合もあるので、こちらも注意が必要ですね。

設置できる照明に制限が発生する

天井を低くすると照明を取り付ける上で注意が必要となる場合も出て来ます。天井高さが2400mmでちょうど良い照明器具を天井高2200mmの部屋に持って来た場合、違和感を感じる場合もあるからです。

圧迫感を受ける人もいる

天井の高さを低くすると、部屋に広がりを演出することは出来ます。しかし、感じ方は人それぞれで、圧迫感を感じる場合も。対策としては、家具や照明などを工夫する必要も出て来ますが、そうなるとコストが余計に発生するなどの弊害も出て来ます。

 

建築家『伊礼智氏』は天井高を低くする事を推奨していた

写真:長崎の工務店 フルマークハウス様から引用

住宅設計をメインにしている建築家さんは天井高2100〜天井高2200を推奨してます。

過去に私が参加したセミナーでも語っていました。

設計について考える(伊礼 智氏)

もう少し天井高を低くする理由について調べてみました。

落ち着いた部屋を造ることが出来る

伊礼氏の著書には「天井を低くした方が落ち着きを感じるから」と書いてあります。特に、家をコンパクトにまとめる場合には、天井を低く取ることが重要で、「かわいいとか、たたずまいが良い家は天井が低い」と語っています。

尚、伊礼氏は著書の中で、家具や照明に関しても言及しています。家具を造り付けの物にしたり、照明の高さや位置に関しても工夫が必要だと話されています。

部屋の均整が取れる

天井を低くすると均整が取れた部屋となり、家全体の美しい佇まいを演出しやすくなります。

家は単純に広くするならば、空間が広がりはするでしょうが、部屋としての広さと高さの均整が取れなくなってしまい、落ち着かない部屋になってしまいます。

また、特に狭い部屋で天井を高くしてしまうと、縦の高さが更に強調されてしまい、アンバランスな部屋になってしまいます。部屋には「ちょうど良い均整」があり、低い天井にすると均整の取れた部屋となるのです。

メリハリをつけやすい

伊礼氏は著書の中で天井のメリハリについても語っています。天井の高さを低くすると、確かに圧迫感を感じる場合もあるでしょう。

しかし、天井高さのベースを全体的に低くして、その上で高い部分も設けるならば、家の中にメリハリを造ることが出来ます。そして、このメリハリこそが、むしろ楽しい空間造りにつながるのです。

例えば、玄関と廊下、そしてリビングを考えてみます。これらが一様に狭い天井であれば、圧迫感だけが生まれてしまうかも知れません。しかし、低い天井をベースにするならば、高さにメリハリを付けることで、家の中をより広く、そして面白くすることも可能となるのです。

伊礼智氏の家造りを見てみると…

伊礼智氏の家を見てみると、家造り自体がコンパクトにまとめられています。家造りは予算が決まっているため、大きく造るよりもコンパクトに凝縮して造る方が良いとの考え方からです。

また、家がコンパクトだとエコな家づくりも可能であったり、かわいく造ることも可能としています。伊礼氏の家造りは、凝縮させてコンパクトに造り込むことが大きな特徴のひとつです。今後の仕事と活躍を楽しみにしたい物です。

 

結局天井高はどうしたら良いのか?

家づくりには、快適性の追求が重要な課題となります。そのために、とにかく大きな空間を造ろうとして、天井を高くするケースが目立ちます。

しかし、それとは逆に、敢えて天井を低くして家に広がりを持たせて「落ち着いた空間」を造ることも、より良い家とする上でとても有効だと感じます。

家は大きく造るだけが良い訳ではありません。

天井を低くして「コンパクトで凝縮した品質の家」とするのも、居住空間を良くする上でベターな手段だと言えるのです。

 

この記事を書いている人 - WRITER -

人気記事Top3 - Popular Posts -

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です