外壁の透湿防水シートが急激に劣化する理由
長持ちする家 研究家 瀬﨑です。
今回は、透湿防水シートに絡んだ、長持ち情報をお伝えします。
透湿防水シートとは、建物の外周に貼る防水シートの事を言います。
このシートの持つ、「室内に溜まった湿気を外部に排出しつつ、雨水は室内に通さない」という大変優れた特徴を生かした工法が、 今や、木造住宅では、常識となっている「外壁通気工法」なのです。
しかし、最近になって、この透湿防水シートの耐久性に大きく問題を投げかける事例が起こってきています。
実は、透湿防水シートが、防蟻・防腐処理の薬剤に触れると、性能が著しく劣化する恐れがあるということがわかってきたのです。
地面から1mの高さまでの構造材には、防腐・防蟻処理を施さないといけないという決まりがあります。(樹種の選択や、特殊な工法による例外あり)
「構造材」ですので、柱・筋違・土台・構造用合板がそれに該当します。
当然、その部分を防蟻・防腐処理をするわけなのですが、その方法が大きく二つに分かれます。
防蟻・防腐処理を「工場」で行う方法と、「現場」で行う方法です。
危険なのは後者です。
薬剤が乾燥する前に、透湿防水シートに触れてしまうと、品質に異常をきたす可能性があります。可能な限り、ある程度乾燥した状態で出荷される工場での処理をお薦めします。
でも、それだけでは安心できません。
実際に、問題が起こった事例は、「構造材」からの防蟻・防腐材の付着ではないのです。
前出の「外壁通気工法」の場合、
空気の通路を確保するため、外装材は構造用合板に直接固定せずに、
「通気金物」か、「通気用胴縁」に間接的に設置します。
実は、この「通気用胴縁」に現場施工された防腐・防蟻剤が、雨で流れ出て
透湿防水シートに付着したことが原因だったのです。
かなりわかりにくいかと思いますので、写真でご説明します。
これが通気金物を使った外壁通気工法↓
この場合は、何の問題もありません。
通気金物が使用できる外装材でしたら、この工法がベストです。
次の写真が、通気胴縁を使った外壁通気工法です。↓
この物件は、工場で防腐・防蟻処理した通気胴縁を使用しています。
乾燥しているのが、写真でも見てとれますので、長時間雨でさらされたりしない限りは、
透湿防水シートに薬剤が付着する可能性は低いでしょう。
全国で問題が起こっているのは、「現場」で通気胴縁に薬剤施工した場合です。
考えてみて下さい。
もし、薬剤を現場施工する職人さんが 、透湿防水シートが薬剤に弱いことを知らなければ・・・・・
「腐らないように、シロアリがこないように」と、たっぷり塗り付ける可能性があります。
人のいい職人さん程、そうなるんじゃないですか?
欠陥住宅の多くは、罪の意識がなく建てられるのです。
実は、構造材ではない通気胴縁に、防腐・防蟻処理をしなさいという規定はありません。
もともと、空気の通り道でもありますから、乾燥していますし、腐朽の心配も少ない部分です。
あえて、防腐・防蟻処理しないという選択もあるでしょう。
実際、この写真は、防蟻・防腐処理なしの通気胴縁を施工しています↓
もっとも重要なことは、
透湿防水シートが、防腐・防蟻剤に弱いという事実を、施工者・工事監督が知っておく
ということではないでしょうか?
知識がなくては、管理・指導もできません。
そういう、私自身、情報収集の重要さを身に染みて感じております・・・・
*クオホームでは、防蟻・防腐剤に対して、強い耐性を持つ透湿防水シートが発売されれば、すぐにでも標準仕様にする予定です。また、その際はブログで情報発信していきたいと思っています。
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