通し柱の本数が少ないけど、うちの家大丈夫なのか!?
長持する家 研究家 瀬崎です。
今回は耐震性に絡む話で、通し柱を取り上げていきます。
理由は、次のような質問を受けたからです。
「通し柱の本数が少ないけど、この家大丈夫なのか!?」
※「通し柱」とは、在来工法、いわゆる昔ながらの木造住宅の工法で、
2階建て以上の建物で、土台から、軒まで通した継ぎ目のない長い柱の事を言います。
業界人は「とおし」と略して呼ぶことが多いので、「とおし、何本使ってますか?」などと質問すると、「ムム、この人できるな」と思わせることが可能です。
通し柱の本数って何本か適正なの?
一般的には、建物の出隅部分に設置します。
1階の面積と2階の面積が同じ総2階と呼ばれる四角形の建物なら4本。
2階が1階に比べて小さく、下屋があるような建物だと、必ずしも出隅部分ではなくなります。
建物がいびつな形になれば、それに応じて本数も増えます。
はっきり言ってしまえば、適正な数はこれといってないです。
通し柱と耐震性はどう関係してるの?
通し柱が多いほど、地震に対して強くなる。
そう誤解している人も多いですね。
特に年配の方にその割合が多いように感じています。
実際は、通し柱が多いからといって、地震に強くなるとは限りません。
そもそも構造計算する際に、通し柱か、そうでないかは一切関係ありません。
また、他にも通し柱には大きな問題点があります。
わたしはこちらの方が気になっています。
それは、断面欠損と呼ばれる継ぎ手部分の構造上の問題です。
通し柱の断面欠損が見逃せない大問題
構造上の問題とは何か?
今から説明します。
通し柱と梁とを繋ぐ際、地震に際にずれて外れたりしないように、複雑な加工を施します。
この加工が問題で、通し柱に穴を開けることになり、加工面が増える毎にどんどん柱の強度が落ちてしまうんです。
4面加工された通し柱は、レッカーで吊って運ぶ際も風で折れないか不安です。
大工さんも慎重に扱います。
地震の揺れに対して踏ん張ってもらわないといけない柱が、そんなに弱々しくてどうなの?
通し柱は不要。他の方法で対処すべし
答えは出てますよね。
通し柱は不要です。
他の方法で、対処する必要があります。
2つご紹介します。
金物工法
金物工法とは、梁と柱を金属プレートとドリフトピンで固定する方法です。
断面欠損がほとんどなく、強度を落とすことなく強固に接続できます。
問題はコスト面。
一般的な在来工法にくらべて、金物工法は30万~40万円は価格アップしますので、それだけかける価値があるかどうかでご判断下さい。
熱橋も要注意。
ドリフトピンは何も処理を施さなければ、直接外気に触れる箇所がいくつも存在します。
また熱を伝えやすく、外気でキンキンに冷やされたピンが室内の空気に触れて結露を起こすリスクがあります。
これを防ぐために断熱材で覆う等の処理が必要になってきますので、ここでもコストUPします。
ぶっちゃけ、何もしていない業者の方が多いかも・・・
梁勝ちにしてホールダウン金物でつなぐ
金物工法に頼らず、通し柱の断面欠損もない方法が、梁勝ちにしてホールダウン金物でつなぐ方法です。
といっても、専門用語が多くわかりづらいかと思いますので、イラストで。
通し柱は使用しないで、1階と2階にそれぞれ柱を建てます。
そして、お互いの柱を両引きボルト+ホールダウン金物を使って、固定します。
この方法だと、断面欠損はありませんし、構造上も強いです。
また、費用もほとんどかかりません。
非常にコストパフォーマンスに優れた方法ですので、おすすめです。
まとめ
通し柱を使ったからと言って、地震に強い家ができるわけではない。
むしろ断面欠損が多く、弱くなっている可能性が高い。
金物工法を採用するか、梁勝ちにして両引きボルト+ホールダウン金物で固定するか。
おすすめは、コスパのいい後者。