高気密高断熱の家は失敗や後悔の元?2025年断熱・省エネの義務化についても解説
クオホームの本田です。
ついに、新築における断熱性能の最低基準があがると、法改正されました。施行は2025年です。
しかし、高気密高断熱の家にしたことで「失敗した」「後悔している」といった声もあがっているのも事実です。
本当に高気密高断熱の家にするべきなのか?また、どれくらいの気密性や断熱性があればいいのか?など不安になっている人もいることでしょう。
そこで今回の記事では、高気密高断熱住宅の落とし穴や、意識すべきポイント、失敗・後悔しないようにするためにはどうしたらいいか?をお伝えしていきます。
気密断熱の知識は、これから新築を検討されている人であれば、間取りを考える上でも避けて通れない話になりますので、参考にしてください。
時間のある人は以下の動画もご視聴いただけると幸いです。
\200棟設計してわかった 高気密高断熱住宅の最低基準とは?/
高気密・高断熱住宅とは?
まずは「高気密・高断熱」という言葉についてです。
「高気密」は気密性が高いこと。家の外と中のすき間が少なければ少ないほど、高気密住宅となります。
「高断熱」は断熱性が高いこと。気密性と同じくすき間がないことはもちろん大事ですが、壁に断熱材を入れることで、外気の温度変化の影響を少なくすることで断熱性を高めます。
ではそれぞれ性能を高めるとどうなるのか、話していきます。
気密性能と数値について
たとえば「冬、暖房をつけているのにすき間風が入ってきて部屋が全然温まらない」
これは、気密性が低いのが原因です。ぜひ、気密性の高い家に住んでいただきたい。
気密性を表すには「C値」という数値を用い、気密測定によって計測することができます。
C値は、家の中にどれくらいすき間があるかを数値かしたもので、C値が小さいほど気密性が高いとなります。
弊社が推奨しているのは、C値1.0以下。理想値は0.5前後です。
特に、床下エアコンや全館空調を検討している場合は、気密性能は重要です。
気密性について詳しくは「高気密住宅とは?デメリット(欠点)はあるのか?C値を測る『気密測定』」の記事で解説しているのでよかったら参考にしてください。
断熱性能と数値について
断熱性能は「Ua値」という数値を用います。これは家の熱がどれくらい外に逃げやすいかを表した数値で、数値が高いほど熱が逃げていってしまう家となります。
※Ua値については「UA値とは?C値やQ値など断熱性能に関する数値を詳しく解説!」の記事を参考にしてください。
では断熱性や気密性が高いとどうなるか?
夏は涼しく、冬は暖かい家になります。
多くの人が、家を建てるなら温度変化が少ない環境で住みたいと思いますよね。
季節を感じたいから夏は暑くていいし、冬は寒い中こたつに入っていたい、というストイックな人はほんの一部でしょう。
快適な家での暮らしを目指すためには、高気密・高断熱住宅である必要があるのです。
関連:「【快適な家に住む】温熱環境とは?法改正による省エネ住宅の義務化についても」
2025年から施行の省エネや断熱の義務化について
冒頭で、日本は先進国の中では断熱性能の水準が低いと言いました。
断熱性能を表す「断熱性等級」というものがあるのですが、基準値や内容が何度か見直され、2022年10月からは最高水準が2ランクも更新されました。
また、2025年以降に建てられる家は、下記表の断熱性等級4が最低基準と法改正され、日本の省エネレベルを世界基準に近づけようとする動きになってきています。
等級1 | |
等級2 | 断熱性は低く、冬は寒い。省エネも見込めない。 |
等級3 | そこそこの断熱性はあるが、高性能ではないため、省エネ性能は低め。新省エネ基準。 |
等級4 | 2016年に制定された、次世代省エネ基準。等級4なら比較的、省エネ住宅と言える。 |
等級5 | 2022年10月までの最高水準。「ZEH基準(※1)」 |
等級6 | 2022年10月1日より制定。一次エネルギー(※2)消費量をおおむね30%削減できる性能。 |
等級7 | 2022年10月1日より制定。一次エネルギー消費量をおおむね40%削減できる性能。 |
さきほど、断熱性が高いと夏は涼しく、冬は暖かい家になると言いました。
するとどうなるか。冷暖房の節約=省エネにつながります。
したがって、高気密・高断熱住宅は省エネ住宅ということになるのです。
断熱性等級をあげればあげるほど、省エネレベルがあがり、高気密・高断熱住宅ということになります。
とはいえ、断熱性等級をあげるのはそれぞれメリット・デメリットがあるので、それについて解説していきます。
高気密・高断熱住宅のメリット
高気密住宅、高断熱住宅にはメリットがたくさんあります。
大きくは、「温度の安定」と「省エネ」ですが、もう少し細かい部分まで見ていきましょう。
一年通して温度が快適
エアコンを必要以上に稼働しなくても夏は涼しく、冬は暖かい。
ちょっといいホテルに行くと、室内はもちろんロビーや廊下の温度も快適で、どこへ行くにも薄着で移動できるといった経験はありませんか?
高気密・高断熱だと、そのような快適な生活を、自宅で体験することができます。
寒さや暑さによるストレスも減りますし、精神的にも健康になれます。
ヒートショックを防げる
ヒートショックは、冬場に起こりやすい、温度差による体の事故です。
お風呂に入る際、寒い廊下や脱衣所から急に熱い湯船に浸かったりすると、血圧が急激に乱高下します。
結果、心筋梗塞や脳梗塞などの疾患を起こしてしまうのです。
室内の温度変化は、ときに人命にも関わってきますので、高気密・高断熱住宅によってそれを防ぐことも大切です。
光熱費の削減につながる
高気密・高断熱住宅は省エネ住宅とも言われています。
年間通して温度がある程度保たれていれば、エアコンやホットカーペット、こたつ、扇風機などの家電を稼働する機会も少なくなります。
細かい話にはなりますが、冬に寒いと感じることが少なければ、お湯をわかす頻度も減るかもしれませんよね。
チリも積もれば山となるとは言いますが、大型家電以外の細かい光熱費も同時に、削減につながるのです。
今後の建築基準を満たした家になる
日本は2050年にはカーボーンニュートラル(CO2の排出量が創出量を合わせたらゼロ以下にし「CO2の排出実質ゼロ」にすること。)を目指していて、そのために2025年より施行される法改正が今回行われました。
また、2030年度には、温室効果ガスの排出量を46%削減(2013年度比)すると目標に掲げています。
今後いつ、また今回のような法改正が行われるかわかりません。
極論、2040年には断熱等級5が最低ラインになります!ということだって、もしかしたらあるかもしれません。(現状、そのような話は出てませんが、可能性のひとつの例え話です)
逆に、今より基準が下がることはないでしょうから、これから家を建てるのであれば、断熱等級4の最低水準は最低限クリアする(義務)として、断熱等級5や6を検討するのも良いでしょう。
ホコリが減り、掃除がラクになる
気密断熱とホコリになんの関連があるのか?と思う人もいるでしょう。
高気密の家であれば、家と外のすき間が少なくなることから、ほこりを含む外気の侵入を減らすことができます。
また、24時間換気システムの設置が必須になるため、高気密で部屋にたまりがちなホコリは、換気システムが吸って外に吐き出してくれます。
さらに、ホコリは静電気がある壁にくっつく性質がありますが、高気密高断熱住宅の場合は壁の表面温度と室温が近いと静電気が起こりにくく、結果ホコリが付着しづらいというのもあります。
30年住むと考えたら、掃除はラクなほうがいいですよね。
高気密・高断熱住宅のデメリット
高気密・高断熱住宅にはデメリットもいくつかあります。
壁内結露が発生する可能性
高断熱にする=断熱材を入れるため、壁と断熱材の間にすき間ができることがあります。この作業は職人が手作業で行うため、どうしても施工する人によって差が出てきてしまうのは否めません。
壁内結露がおこると断熱性能が弱くなり、最悪、柱の腐敗につながることも。
できるだけそうならないよう、施工に慣れている工務店に依頼すると良いでしょう。
結露に強い断熱材もありますから、高断熱住宅を建てる際にはよく相談してください。
換気を十分に取る必要がある
高気密=すき間がなく密閉に近い状態なので、空気が循環してくれません。
そのため、匂いがこもったり、シックハウス症候群やアレルギーを引き起こすといったリスクも挙げられたりします。
しかし、現行法では24時間換気システムを導入する義務があるため、最低限空気の循環は確保でき、匂いがこもって取れないほどにはなりません。
下の画像のようなものが24時間換気システムです。
工費がかかる
気密や断熱に限ったことではなく、何かしらの性能をあげようとすれば、少なからず工費はプラスされていきます。
優れた素材を使うだけでなく、求める性能によってはそもそもの構造も変えたりする必要も出てくるため、予算との相談は必要になるでしょう。
しかし、高断熱・高気密にすることで光熱費が抑えられたり、それこそZEH基準を満たす家になればグッと毎月の支出を落とすことができます。その辺のバランスも考慮しながら、20年30年スパンのコストで判断していってもらえるといいかもしれません。
高気密・高断熱住宅で後悔や失敗した人の声
実際、高気密高断熱の家に住んでみたけど「失敗した」「後悔している」
といった声も少なからずあがっているのも事実です。
主に言われるのが
- 窓が少なく(小さく)部屋が暗い
- 思ったより冬が寒い
- 動線が悪く住みづらい
- 結露やカビが発生しやすい
などと言ったところ。
窓が少なく(小さく)部屋が暗い
気密性や断熱性を重視するために、窓を小さくしたり少なくしたりすることがあります。
外気を伝えやすい窓を減らせば確かに断熱性や気密性を確保できるかもしれません。
ただその分、光が入ってくる量が減り、家の中全体が暗い印象になる可能性もあります。
リビングに大きな窓をつけたり、中庭を設計して解放感のある家にはできません。
思ったより冬が寒い
実はそこまで高断熱ではなかったケース。
「高断熱」という言葉の落とし穴でもあると思います。
断熱性の基準はUa値という数値で表すことができますが、どこからが高断熱と言えるかは曖昧です。
冬を暖かく過ごしたくて高断熱にこだわっている場合は、しっかりと数値で業者と計画立てるのが良いでしょう。
生活動線が悪く住みづらい
高気密・高断熱をあまりにも意識しすぎて、肝心な生活動線が悪くなってしまうケース。
とくに新しい家を建てるとなると、いくら頭の中でイメージしても実際に住んでみないとわからない、気づけないことって結構あるんです。
その中でも生活動線は住みやすさに直結します。
- 勝手口がないからゴミ置き場まで遠回りしなくてはいけない
- 窓がある部屋まで洗濯物を運ばなくてはいけない
といったような具合で、生活動線を犠牲にしてまで高気密高断熱にこだわるのは注意が必要です。
結露やカビが発生しやすい
高気密であるゆえに、換気をしっかりしないと結露やカビが発生しやすくなります。
結露は冬場、外の寒さと部屋の暖かさの温度差によって窓やサッシに結露が出ます。
カビは湿気が多く暖かい場所に発生するため、換気性能が悪いとカビが発生する可能性も。
結露やカビを防ぐためには、換気性能をよくしないといけません。
そもそも一種換気と三種換気の違いがよく分からない人へ(メリット、デメリット)
第一種換気システムはこれが最適?アメニティエアコンとセットで使えるガデリウスの「RDKR」とは
高気密・高断熱住宅にするには?
実は「高気密・高断熱」には明確な基準が定められていません。
気密性能や断熱性能を計測して数値で表すことはできるのですが
それがどの数値をクリアしていれば高気密や高断熱であるというのは、実際のところ存在しないんですね。
工務店やハウスメーカーが「うちは高気密・高断熱です」と言えば、そうなるのです。言ったもん勝ちというのが、現状の闇深いところ。
でもここまできて、高気密高断熱の判断がわからないままでは困りますよね。
では、高気密・高断熱の明確な基準がない中で、どうやって性能を判断すれば良いのか?
冒頭に貼った動画内でより詳しく解説していますが
200棟設計した私が考える、これからの高気密高断熱の最低基準をお伝えしようと思います。(あくまでも私の中の基準です)
窓のサッシ性能を高くする(断熱性能)
家の中の断熱性能を大きく左右するのは、やはり窓です。
窓のレベルはすごく大事です。
そこで最低でも「樹脂窓」を採用することをおすすめします。
樹脂窓とは、フレーム部分が樹脂素材でできている窓で、下の画像のようなものです。
窓ガラスに関しては、ペアガラスでOKです。トリプルガラスまでにしなくとも、ペアガラス+樹脂窓で最低限問題ないと思います。
気密性能のC値について
気密性能は、動画でも別記事でも話してますが、C値1.0以下がひとつの基準になります。
2003年以降、24時間換気システムの設置が義務化されているのですが
この換気システムが正常に働く気密性能が、C値1.0と言われていて、2時間で家の空気が入れ替わります。
ですので、まずは最低限C値1.0以下を目指してもらって、理想は0.5を目標に設計していただいたらいいかなと思います。
1.6とか1.8とかで高気密ですと言われたら、ちょっと疑ったほうがいいです。
断熱性能の基準について
断熱性能の数値(Ua値)については、HEAT20という団体が出している性能基準でいうところのG1以上は最低ラインなんじゃないかなと思います。
HEAT20についてより詳しくは「全館空調の評判が知りたい?それならHEAT20を知っておこう!」の記事で解説しています。
正直、そこまでハードルは高くないです。
先述した窓の性能をクリアしていて気密性能も1.0以下であれば、断熱性能の数値はG1をクリアすることでしょう。
換気システムについて
第1種換気システムと第3種換気システムなら、もちろん第1種換気システムのほうがいいのですが
第3種換気システムでも高気密高断熱の家だと言っていいです。
第3種換気システムは、吸気は自然に行い、排気を強制的に行うシステムです。
第1種換気システムは、吸気も排気も強制的に行うシステムです。
後者のほうが費用がかかるので、予算に合わせて検討していただくといいでしょう。
関連記事:MSデマンド換気システムの特徴について解説!換気の種類や仕組みについても
結局、高気密・高断熱はどこまで高めればよいのか?
正直、気密断熱性能をどこまで高めればよいかに対しての正しい答えはありません。
家を建てる予算の中で、快適に住まうための優先順位をどこに置くか次第です。
極論、断熱等級を最大の7にすることで、一部の間取りやデザインが理想通りにならない可能性だってあります。
例えば、窓を増やせばその分気密性や断熱性が落ちていきます。
窓は家の中でもっとも熱を伝えやすいからです。
100%すべて自分の理想とおりの家になることは、難しいと思ってください。
その中で、何をどこまで妥協し、気密性・断熱性を高めていくかを考えましょう。
その最低ラインとして、断熱等級4という基準が2025年から義務化されるので
基本的にはある程度の気密断熱が保証され、省エネにもつながります。
ただ、ハイグレードではないので、より省エネになるZEH基準やそれ以上をどうしても目指したいのであれば、断熱等級5以上を目標に設計プランを立てていただくと良いのではないでしょうか。
最も大事なのは冷暖房計画がどうなっているか
ここまで高気密・高断熱の話をしてきましたが、みなさん「高気密高断熱の家に住みたい」のが目的ではないですよね。
真の目的は「夏は涼しく、冬は暖かい家に住むこと」これが本質にあると思います。
これをおろそかにしてしまって、ただ単に「高気密高断熱の家を設計してください!」と依頼してしまうと
思ってたのと違う家が建ってしまった…ということにもなりかねません。
全館空調にするのか、別の方法をとるのか。
家をどうやって温めて、どう遮熱するかという部分からしっかり話し合って決めた上で
気密断熱性能をどうしていくかを考えていくのが良いと思います。
高気密・高断熱の家を建てたい人は
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
弊社クオホームは兵庫県姫路エリアで施工担当している工務店です。
クオホームのコンセプトは『長持ちする家』で、今回の記事で紹介した気密断熱の推奨性能は以下のとおりです。
断熱性能 | HEAT20 G2 レベル Ua値0.46 (プランにより変動あり) |
気密測定 | 全棟気密測定C値1.0以下保証 |
これを推奨値として、まずは設計プランのご提案をさせていただきますが、もちろんご要望次第ではよりグレードの高い、高気密・高断熱住宅を目指すこともできます。
姫路エリアで高気密・高断熱の家を建てたいとご検討されているのであれば
お気軽にお問い合わせいただけると幸いです。
その他、気密断熱に関する記事は以下も参考にしてください。
・一条工務店やクオホームの高気密高断熱住宅のデメリットはあるの?
・断熱等級とは?等級4が最低基準になる2025年に向けて。知っておかないとヤバいです